探究型の授業に「学び方」が変化すれば、「教え方」にも変化が求められる。教員も、今までのような「講義型の授業形式」から、「ファシリテート型の指導形式(授業全体をコントロールし個人の考えを引き出す)」にシフトしなければ、本当の意味での探究型での授業展開は難しい。しかし、探究型の授業展開といっても、多くの教員は、そのような指導を受けてきた経験も少ないし、もちろん教育実習などの場では探究型の授業展開を目の当たりにすることも、その手法を教わる機会もほとんどない。探究型の学びが定着している海外大学やインターナショナルスクールなどで、学んだり指導したりした経験がある方は、ごく少数にとどまるので、探究型の授業展開が広がるには、少し時間がかかるかもしれない。
しかし、そのような環境の中でも、学習指導要領が変化し、探究型の授業展開が求められるとすれば、少なくとも授業展開の指針となるものが必要となる。講義型の授業展開では、一定の授業スタイルというものが教科別にあるし、現状の大学入試問題を想定すれば、おのずと集約されてくるものである。
だが、探究型の授業展開では、「解が1つではないもの」をテーマとして扱うことも多く、必ずしも「1つの正解に導く」ような授業展開にならないケースが多い。教科単体での知識だけではなく、教科の枠を超えた知識の活用なども求められることになり、一般的な探究型の授業展開の見本となる「指導マニュアル」を示すのが難しい。それゆえ、探究型の授業展開を行う中で指針となるのは、「ルーブリック」(ルーブリック評価)と言われている。
「ルーブリック」とは、各種の定義はあるが、簡潔に言えば、「評価や到達の基準を事前に示したもの」と考えればよい。「ここまで、できればAランク」、「これが、できればBランク」…というように、学習の進捗や到達を可視化したものである。多くは、縦軸と横軸でマトリックスを作り、A1~C3の9段階で示すことが多い。実際にリベラルアーツ系や探究系の学問を扱う大学では、すでに入試の評価に取り入れているところもある。この「ルーブリック」を事前に示すことで、生徒は「何をすればよいのか」、「どこまでできれば到達するのか」、そして「どのような観点で評価されるのか」…などが事前にわかり、自分自身で探究学習の目標や到達を見据えることができる。
一方で、教員も「何を、どこまで、どのように取り組ませればよいのか」を事前に示すことができるので、現在のような「結果としての評価」ではなく、「学習の過程から評価」ができることで、学び方の目安にも、教え方の指針にも用いることができる。しかも、学習者と指導者の共有の指針になるため、後ほどの振り返りや次に向けての計画なども立てやすくなる。それゆえ、探究型の授業展開をするということは、「ルーブリック」を取り入れることが必要となってくる。
学び方の変化が起これば、教え方の変化が起こるのは、もちろんの事、このように、「評価の方法」も変わるのである。国内では、「評価の方法」に関して、あまり目が向かずに、「指導法」を重視する傾向が強かったが、探究型の授業展開が多くなれば、「評価方法」に目が向くようになるだろう。「評価方法」から、学び方や教え方を考えていく…。このようなアプローチが主流になったときに、初めて教育現場での大きな変化を迎え、教育課程の変化の意味が出るのかもしれない…。
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