この時期だからこそ、海外留学へ挑戦する意義①

今年度は、最近の社会情勢を受けて、全くと言っていいほど、「海外留学プログラム」が実施できなかった…。一部の大学では、「個人留学」として中断していた留学を再開したり、当初から予定していた留学を「個人契約」として、渡航したりしているようだが、中高生には全く、その機会がなかった。もちろん、このような社会情勢の中、国内よりも状況が厳しい海外へ行くこと自体が、高いリスクになるため、強く希望する生徒もご家庭もなかったのも事実である。しかし、やっとビジネス往来が始まり、どうやらオリンピックも開催されそうな気配であるから、段階的に留学ができる時期は来るのであろう。

しかし、このような中だからこそ、「どのようにしたら生徒たちに海外の経験を積ませることができるのか?」「異文化に触れて、現地なみの本物の体験をさせることができるのか?」…ということを考えるのが、中高での、特に本校(神田女学園)のようなグローバル系の教育を行う学校の使命になった年でもあった。いくつかの学校では、代案のプログラムとして、「国内での研修」に振り替えたり、「Webを用いての交流」を行ったりしている。機会を得られないまま卒業することや資格のための時間数として計上する必要があるのであれば、実施する意味はあると思う。本校でも、海外での修学旅行(台湾の姉妹校交流)が延期となり、国内のフィールドワークに振り替えて実施することにした。

その経験を振り返ってみて、そもそも海外での留学経験とは、「何のために行うのか?」という素朴な疑問を持つに至ったのである。大学入試のためのキャリア形成なのか、英語のアウトプットの機会を得るためなのか、それとも保護者が連れていけない(家族で行くと相当な費用負担…)ので、その代わりなのか…?そんな疑問を解消するために、本校での留学は、あえて「リュウガク」とカタカナで表して、単なる英語のアウトプットの機会のためはなく、キャリア形成のためだけではないことを示している。海外への留学とは、「現地でしか体験できない本物を知る」ことが本来の目的である。だからこそ、本校ではWebでの留学は行わずに、来たるべき日に備えるようにプログラムを組んだのである。

本校では、海外への留学が再開できた時に備えて、「より高いコミュニケーション力を養うこと」を第一にして、学内のリソースを十分に活用した体制を整えた。全員が参加する「オーラル」の授業では、グループ学習をメインとして、ネイティブ講師が授業をファシリテートし、生徒がそれぞれの得意を生かして英語でのコミュニケーションを取る時間としている。英語の習熟度が高い生徒は他の生徒の模範となり、これからの生徒は少しでも追いつけるように努力を重ねる…。「オンライン」での英会話レッスンでは、レッスンプランに基づいて、コミュニケーションのフレームで、学び、相互に理解しやすいコミュニケーションレベルに仕上げていく。そして、「K―SALCプログラム(生徒の言語運用能力に合わせて適切なレベルと方法でレッスンをする本校独自のプログラム)」では、ネイティブ講師とのマンツーマンのレッスンを行うことで、フレームを超えた自分の言葉でコミュニケーションが取れるようになっていく…。このような「スモールステップ」を設けているので、ベーシックからスタートする生徒は、「授業」+「オンライン」を活用して、まずはフレームを用いてコミュニケーションが取れるようになり、スタンダードやアドバンストから始める生徒は、「SALC」でネイティブ講師と自由に、自分の言葉で話せるようになるのである。

このような時期でも、来たるべき日に備えて準備をしているからこそ、DDP(ダブルディプロマ)に参加する希望者約20名と中長期での留学に備える生徒約40名が、モチベーションを失わずに本校へ希望をもって入学する予定である。もちろん、全学年の40%以上が留学への強い希望を持つ生徒たちであるから、学内的にも来たるべき日に備えた雰囲気はできている。

外務省が推奨する「渡航レベル」になるまでは、生徒の安全を担保し、保護者の不安を減らすために、無理な留学は行うことはできない…。しかし、いつでも行くことができる準備をすることこそが、この時期だからこその「挑戦」につながるのである。

そして、そのモチベーションをどのように具体化していくのか…。次回に紹介したい…。

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